環境基準
国や地方公共団体が公害防止対策を進めるには、環境の質がどの程度のレベルに維持されることが望ましいかという目標が必要です。この目標が環境基準と呼ばれるもので、環境基本法によって、水質汚濁に係る環境基準は、「人の健康の保護に関する環境基準」と「生活環境の保全に関する環境基準」が定められています。
環境基準の類型
水質汚濁の防止を図る必要のある公共用水域には、環境基準の類型が指定されます。指定された水域について、環境基準の維持達成状況を把握するための測定点を環境基準点といいます。
湖沼(天然湖沼及び貯水量1,000万立方メートル以上の人工湖)
ア類型 | 利用目的の適応性 | 基準値 | ||||
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水素イオン濃度(pH) | 化学的酸素要求量(COD) | 浮遊物質量(SS) | 溶存酸素量(DO) | 大腸菌群数 | ||
AA | 水道1級、水産1級、自然環境保全及びA以下の欄に掲げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
1mg/l以下 | 1mg/l以下 | 7.5mg/l以上 | 50MPN/100ml以下 |
A | 水道2・3級、水産2級、水浴及びB以下の欄に掲げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
3mg/l以下 | 5mg/l以下 | 7.5mg/l以上 | 1000MPN/100ml以下 |
B | 水産3級、工業用水1級、農業用水及びCの欄に掲げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
5mg/l以上 | 15mg/l以下 | 5mg/l以上 | - |
C | 工業用水2級環境保全 |
6.0以上 8.5以下 |
8mg/l以下 | ごみ等の浮遊が認められないこと | 2mg/l以上 | - |
備考
水産1級、水産2級及び水産3級については、当分の間、浮遊物質量の項目の基準値は適用しない
注1「自然環境保全」:自然探勝等の環境の保全
注2「水道1級」:ろ過等による簡易な浄水操作を行うもの
「水道2,3級」:沈殿ろ過等による通常の浄水操作、又は前処理等を伴う高度の浄水操作を行うもの
注3「水産1級」:ヒメマス等貧栄養湖型の水域の水産生物用並びに水産2級及び水産3級の水産生物用
「水産2級」:サケ科魚類及びアユ等貧栄養湖型の水域の水産生物用並びに水産3級の水産生物用
「水産3級」:コイ、フナ等富栄養湖型の水域の水産生物用
注4「工業用水1級」:沈殿等による通常の浄水操作を行うもの
「工業用水2級」:薬品注入等による高度の浄水操作、又は、特殊な浄水操作を行うもの
注5「環境保全」:国民の日常生活(沿岸の遊歩等を含む。)において不快感を生じない限度
類型 | 利用目的の適応性 | 基準値 | |
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全窒素 | 全りん | ||
Ⅰ | 自然環境保全及びⅡ以下の欄に掲げるもの | 0.1mg/l以下 | 0.005mg/l以下 |
Ⅱ | 水道1・2・3級(特殊なものを除く。)、水産1種、水浴及びⅢ以下の欄に掲げるもの | 0.2mg/l以下 | 0.01mg/l以下 |
Ⅲ | 水道3級(特殊なもの)及びⅣ以下の欄に掲げるもの | 0.4mg/l以下 | 0.03mg/l以下 |
Ⅳ | 水産2種及びⅤの欄に掲げるもの | 0.6mg/l以下 | 0.05mg/l以下 |
Ⅴ | 水産3種、工業用水、農業用水、環境保全 | 1mg/l以下 | 0.1mg/l以下 |
備考1:基準値は、年間平均値とする。
備考2:水域類型の指定は、湖沼植物プランクトンの著しい増殖を生ずるおそれがある湖沼について行うものとし、全窒素の項目の基準値は、全窒素が湖沼植物プランクトンの増殖の要因となる湖沼について適用する
備考3:農業用水については、全りんの項目の基準値は適用しない。
注1「自然環境保全」:自然探勝等の環境の保全
注2「水道1級」:ろ過等による簡易な浄水操作を行うもの
「水道2,3級」:沈殿ろ過等による通常の浄水操作、又は前処理等を伴う高度の浄水操作を行うもの
注3「水産1種」:サケ科魚類及びアユ等の水産生物用並びに水産2種及び水産3種の水産生物用
「水産2種」:ワカサギ等の水産生物用及び水産3種の水産生物用
「水産3種」:コイ、フナ等の水産生物用
注4「環境保全」:国民の日常生活(沿岸の遊歩等を含む。)において不快感を生じない限度
達成期間の分類 | |
---|---|
「イ」 | 直ちに達成 |
「ロ」 | 5年以内で可及的すみやかに達成 |
「ハ」 | 5年を越える期間で可及的すみやかに達成 |
「ニ」 | 段階的に暫定目標を達成しつつ、環境基準の可及的すみやかな達成に努める。 (湖沼について、「イ」「ロ」「ハ」により難しく、段階的に水質改善を図る必要がある場合) |
COD(化学的酸素要求量)
COD(Chemical Oxygen Demand)とは、化学的酸素要求量の略称で、水中の有機物を酸化剤によって化学的に炭酸ガスと水などに酸化分解し、そのときに消費される酸化剤の量を酸素の消費量に換算し表したものです。湖沼や海域の有機物による水質汚濁を測る代表的な指標として利用されています。
全窒素
窒素は、自然界では植物体などに含まれ、降雨などに伴い山林・田畑から流出し、水中を移動します。また人為的には、生活排水及び畜産排水などに含まれています。全窒素は、水中の様々な形の窒素を全体として測定したものであり、湖沼や海域の富栄養化を測る代表的な指標として利用されています。
全りん
りんは、自然界では地殻を構成する岩石や土壌に含まれ、降雨などに伴い山林・田畑から流出し、水中を移動します。また、人為的には、生活排水、工場排水、及び畜産排水などに含まれています。
全りんは、水中の様々な形態のりんを全体として測定したものであり、湖沼や海域の富栄養化を測る代表的な指標として利用されています。
BOD(生物化学的酸素要求量)
BOD(Biochemical Oxygen Demand)とは、生物化学的酸素要求量の略称で、河川水などの有機物による汚濁の程度を示すもので、水中に含まれている有機物質が、一定期間、一定温度のもとで微生物によって酸化、分解されるときに消費される酸素の量をいい、数値が高いほど有機物の量が多く、汚れが大きいことを示します。
DO(溶存酸素量)
DOはDissolved Oxygenの略称で、水中に溶けている酸素の量です。酸素の溶解度は水温、塩分、気圧等に影響され、水温が高くなると小さくなります。
DOは河川や海域の自浄作用、魚類などの水生生物の生活には不可欠なものです。一般に魚介類が生存するためには3mg/リットル以上、好気性微生物が活発に活動するためには2mg/リットル以上が必要です。
pH(水素イオン濃度指数)
水の酸性とアルカリ性の度合いを示す指標をいいます。中性の水はpH7で、7よりも小さいものは酸性、7より大きいものはアルカリ性といいます。
通常の淡水はpH7前後で、海水はややアルカリ性でpH8前後です。
浮遊物質量
浮遊物質はSuspended Solidsの略称です。水中に浮遊又は懸濁している直径2mm以下の粒子状物質のことで、粘土鉱物による微粒子、動植物プランクトンやその死骸、下水、工場排水などに由来する有機物や金属の沈殿物が含まれます。
浮遊物質が多いと透明度などの外観が悪くなるほか、魚類のえらがつまって死んだり、光の透過が妨げられて水中の植物の光合成に影響することがあります。